記事一覧

フェリーと路線バスで行く“アクセス最難関の島”体験記

正直に言うと、行く前は少し不安でした。

本当に辿り着けるのか。
帰りの足はあるのか。

半年前に離島好きの友人が「日本でいちばん行きにくい有人島を制覇した」と話していた。興味を持って調べたところ、東京から公共交通機関だけで向かうには最低でも2日かかる島がいくつかあることを知った。その中でも山口県の見島は、萩からのフェリーが1日1往復のみで、萩までの路線バスの本数も限られていた。

当初は飛行機で山口宇部空港まで行くことを考えていたが、費用を抑えたかったのと、長距離移動そのものを楽しみたいという気持ちがあった。夜行バスと在来線、路線バス、フェリーを組み合わせれば、片道15000円程度で行けると分かり、3泊4日の休みを取って計画を立てた。

時期は5月の連休明けを選んだ。この時期なら海が比較的穏やかで、フェリーの欠航リスクが低いと判断した。ただし気象条件によっては運休もあるため、予備日を含めた日程を組む必要があった。

🔁 旅ちゃんねるの前回の癒し旅はこちら
👉青島ひとり旅|猫と海に助けられた日(瀬戸内)

実際にやってみた流れ

東京から新山口駅まで

出発は金曜日の夜23時発の夜行バスを使った。バスタ新宿から広島行きの便で、新山口駅には翌朝7時20分に到着する予定だった。予約は出発の3週間前にウェブサイトから行い、座席は通路側の前方を選んだ。料金は7800円だった。

乗車当日は22時30分にバスタ新宿に到着した。トイレを済ませて乗り場を確認し、22時50分から乗車が始まった。車内は8割程度の乗車率で、隣の席は空いていた。首に巻くタイプのネックピローと耳栓、アイマスクを持参していたが、結局使ったのは耳栓だけだった。

途中、深夜2時頃に足柄SAで20分の休憩があった。自動販売機で飲み物を買い、トイレに行った。その後は断続的に眠り、気づくと広島県に入っていた。朝6時に吉和PAで2回目の休憩があり、ここで洗面所で顔を洗った。

新山口駅には定刻より5分早く7時15分に到着した。駅構内のトイレで着替えと歯磨きを済ませた。コインロッカーに荷物を預けることも考えたが、バックパック1つだったのでそのまま持ち歩くことにした。

新山口駅から萩バスセンターまで

新山口駅から萩までは防長交通の路線バスを使う。「スーパーはぎ号」という特急バスで、所要時間は約1時間10分、料金は1570円だった。1日6便あり、私が乗る便は8時20分発だった。

バス乗り場は新山口駅新幹線口を出て右手にあった。7時50分頃に向かうと、すでにバス停の表示があり、待合スペースもあった。駅構内のコンビニで朝食用のおにぎりとお茶を買った。

8時10分頃にバスが到着し、運転手に行き先を告げて現金で支払った。交通系ICカードは使えないとウェブサイトで確認していたので、あらかじめ小銭を用意していた。乗客は私を含めて4人だった。

バスは定刻に出発した。中国自動車道を使わず、国道262号線を通る一般道ルートだった。車窓からは田園風景と山間部が続き、時折小さな集落を通過した。途中、絵堂、明木などいくつかのバス停に停車したが、乗降客はいなかった。

萩バスセンターには9時30分に到着した。ここからフェリー乗り場の萩港までは徒歩15分程度だったが、フェリーの出港時刻は12時30分だったので、先に萩の市街地を歩くことにした。

萩市街地での待ち時間

萩バスセンターから萩城跡方面へ歩いた。観光案内所で見島についての資料をもらい、帰りのバスの時刻も確認した。案内所の職員に見島に行くことを伝えると、「天気が良くてよかったですね」と言われた。

萩城跡周辺を1時間ほど散策し、コンビニで昼食用のパンと飲み物を購入した。見島には商店が1軒あると聞いていたが、営業時間が不確かだったため、2日分の食料を買い込んだ。パン4個、カップ麺2個、お菓子、ペットボトルの水とお茶を合わせて約2000円分になった。

11時30分に萩港へ向かった。バスセンターからは海沿いに歩き、途中の道は歩道が狭かったため車に注意しながら進んだ。

フェリー乗船手続き

萩港のフェリーターミナルには11時45分に到着した。建物は小さく、待合室と券売窓口が一体になっていた。窓口で見島行きの乗船券を購入した。2等席で片道2280円だった。往復割引はなく、帰りの便は見島で購入することになると説明された。

乗船名簿に名前と連絡先を記入した。この日の乗客リストを見ると、私の前に5名ほどの名前があった。待合室には地元の方と思われる年配の女性が2人座っていた。

12時頃、外にフェリーが接岸しているのが見えた。「おにようず」という船名だった。全長約40メートルほどの小型フェリーで、車両も積載できる構造になっていた。船内放送で乗船開始が告げられたのは12時20分だった。

乗船は徒歩客が先で、その後に車両が積み込まれた。タラップを上がり、船内の2等客室に入った。畳敷きの和室スタイルで、定員は50名程度と思われた。すでに先客が3名いたので、窓際の場所に荷物を置いた。

見島までの航路

12時30分、定刻通りに出港した。エンジンの振動が床から伝わってきた。萩の町並みがゆっくりと遠ざかり、10分ほどで外海に出た。

船内には自動販売機とトイレがあった。デッキにも出られたので、15分ほど外の空気を吸った。風は強かったが、波は比較的穏やかだった。他の乗客も数名デッキに出ていた。

40分ほど経つと進行方向に島影が見えてきた。それが見島だった。島は思ったより起伏があり、集落は海岸沿いに密集しているように見えた。

13時40分、見島の本村港に到着した。所要時間は約1時間10分だった。下船は車両が先で、徒歩客はその後だった。港には迎えの車が数台停まっていた。

見島での移動

港のすぐ近くに宇津観音という寺があり、まずそこに向かった。港から徒歩3分ほどで、石段を上がると本堂があった。境内からは港と集落が見渡せた。

集落内を歩いて商店を探した。港から200メートルほど歩いたところにあったが、シャッターが閉まっていた。張り紙を見ると、営業は午前中のみと書いてあった。想定していた状況だったので、前日に食料を買っておいて正解だった。

宿は港から徒歩5分の民宿を予約していた。チェックインは15時からだったが、13時50分頃に到着したところ、女将さんが出てきて「荷物だけ置いていっていいですよ」と言ってくれた。バックパックを部屋に置き、貴重品だけ持って外出した。

島内の探索

見島は周囲約17キロメートルで、集落があるのは東側の本村地区だけだった。島内にはレンタサイクルもレンタカーもなく、移動手段は徒歩のみだった。

まず北側の宇津展望台を目指した。集落から離れると舗装道路は続いていたが、傾斜がきつくなった。30分ほど歩くと分岐点に着き、そこから展望台までは未舗装の山道になっていた。

展望台までの道は草が茂っていて、足元が見えにくい箇所があった。持参していたトレッキングポールを使って進んだ。15分ほど登ると開けた場所に出て、そこが展望台だった。ベンチと説明板があり、日本海が一望できた。

展望台で20分ほど休憩し、持ってきたパンを食べた。下山は同じ道を戻り、14時50分頃に集落に戻った。

民宿での滞在

15時に民宿に戻り、正式にチェックインした。部屋は6畳の和室で、窓から港が見えた。共同のトイレと洗面所は廊下にあり、風呂は17時から使えると説明された。

夕食は18時だった。食堂に行くと、他の宿泊客はおらず、私一人だった。女将さんが「今日は他にお客さんがいないので、ゆっくりしてください」と言った。

料理はサザエの壺焼き、刺身、煮魚、天ぷらなど海産物が中心だった。ご飯と味噌汁はおかわり自由だった。女将さんと会話する機会があり、島の人口が約700人であること、冬場はフェリーがよく欠航することなどを聞いた。

食後は部屋で休み、21時頃に就寝した。波の音が微かに聞こえたが、静かな環境だった。

翌日の行動

翌朝は6時に起床した。朝食は7時で、ご飯と焼き魚、卵焼き、味噌汁というシンプルな内容だった。

チェックアウトは10時だったが、フェリーの出港は14時50分だったので、荷物を預かってもらい、島の南側を歩くことにした。

南側には大井という地区があり、牧場や牛が放牧されていると聞いていた。集落から南へ続く道を歩き始めた。途中、見島ウシという天然記念物の看板があった。

1時間ほど歩くと開けた場所に出て、牧場が見えた。柵の向こうに黒い牛が数頭いた。近づくと牛が警戒した様子でこちらを見たが、逃げることはなかった。

12時頃に集落に戻り、港近くのベンチで昼食を取った。カップ麺を食べたかったが、お湯が手に入らなかったので、残っていたパンで済ませた。

帰路のフェリー

13時に民宿に戻り、荷物を受け取った。女将さんにお礼を言い、港へ向かった。

フェリーターミナルで乗船券を購入し、14時30分頃に乗船した。帰りの船は行きよりも乗客が多く、15名ほどいた。多くは島民と思われる方々だった。

14時50分に出港し、萩港には16時に到着した。予定通りの時刻だった。

萩から新山口駅まで

萩港からバスセンターまで徒歩で戻り、16時40分発の新山口駅行きのバスに乗った。料金は行きと同じ1570円だった。

バスは18時前に新山口駅に到着した。駅ビルで夕食を取り、19時30分発の夜行バスで東京へ戻った。

途中でつまずいた点

最も困ったのは見島での食料確保だった。商店が午前中のみの営業で、到着時刻には閉まっていた。事前に調べてはいたが、具体的な営業時間までは把握していなかった。結果的に萩で食料を買っておいたので問題はなかったが、もし買い忘れていたら夕食以外の食事に困っただろう。

フェリーの予約ができない点も戸惑った。電話で問い合わせたところ、予約制ではなく当日先着順とのことだった。繁忙期は乗れない可能性もあると言われ、不安だったが、5月の平日だったため問題なかった。

見島での移動手段も想定より限られていた。レンタサイクルがあると思っていたが、実際にはなかった。集落の人に聞いたところ、以前はあったが現在は休止中とのことだった。そのため、徒歩での移動しかできず、島の西側や北端まで行く計画は断念した。

宇津展望台への道も予想以上に荒れていた。観光地図には載っていたが、実際には利用者が少ないようで、草が伸びていた。長袖長ズボンとトレッキングシューズを履いていたので大丈夫だったが、軽装だったら引き返していただろう。

萩での待ち時間の使い方も非効率だった。2時間以上あったが、事前に回るルートを決めていなかったため、行き当たりばったりになった。結果的に萩城跡周辺しか見られなかった。

夜行バスでの睡眠も思ったより取れなかった。座席のリクライニング角度が想定より浅く、首が痛くなった。ネックピローを持参していたが、形状が合わず使わなかった。別のタイプを試すべきだった。

帰りのバスの時刻確認も曖昧だった。萩バスセンターで時刻表を撮影していたが、曜日によって運行本数が違うことを見落としていた。たまたま日曜日も運行している便だったが、事前にもっと細かく確認すべきだった。

自分なりに工夫した部分

食料の持参量は多めにした。当初は1日分だけ考えていたが、商店の営業状況が不確かだったため、2日分の食料を萩で購入した。パンは日持ちするものを選び、カップ麺は万が一お湯が手に入った時のために持って行った。結果的にカップ麺は食べられなかったが、持って行ったこと自体は正解だった。

水分も多めに用意した。ペットボトル2リットル分を持参したが、5月でも日中は暑く、展望台への登山で1本使い切った。民宿では食事時以外の飲み物提供がなかったため、持参した水が役立った。

服装は重ね着できるようにした。朝晩は涼しいが日中は暑いと予想し、長袖シャツの下に半袖Tシャツを着た。実際、日中は長袖を脱いで歩き、展望台では羽織った。

靴はトレッキングシューズを選んだ。スニーカーでも問題ないと思っていたが、展望台への道が予想より悪かったため、グリップ力のある靴で正解だった。

現金も多めに用意した。島内にATMはないと事前に確認していたので、萩で5万円を引き出しておいた。実際には民宿の支払いが現金のみで、1泊2食で9000円だった。カード決済ができると思っていたので、事前に確認しておいてよかった。

帰りのフェリー時刻は何度も確認した。1日1便しかないため、乗り遅れると島に1泊延長になる。民宿のチェックアウト後も時計を何度も見て、余裕を持って港に向かった。

バスの時刻表は印刷して持参した。スマートフォンの電池切れに備え、紙の時刻表を持っていた。実際には電池は十分あったが、紙の方が見やすく、何度も確認できた。

充電器とモバイルバッテリーも持参した。民宿でスマートフォンを充電できたが、カメラの充電はバッテリーが必要だった。容量10000mAhのものを持って行き、1度使用した。

地図アプリはオフラインマップをダウンロードしておいた。島内のモバイル回線は電波が弱いと聞いていたため、事前に山口県全域の地図を端末に保存した。実際には電波は問題なかったが、準備しておいたことで安心できた。

実感した変化

この旅行を通じて、公共交通機関だけで遠隔地に行く計画力がついた。以前は車やレンタカーに頼りがちだったが、バスとフェリーの組み合わせでも十分に旅ができることを実感した。時刻表を細かく調べる習慣もついた。

待ち時間の過ごし方も上達した。萩での2時間、見島での4時間という長い待ち時間を、観光や散策に充てることで無駄にしなかった。以前なら退屈に感じただろうが、今回は時間を楽しめた。

荷物の選別も上手くなった。3泊4日の旅行をバックパック1つで済ませられたのは初めてだった。必要最低限のものだけを持ち、衣類は圧縮袋に入れた。洗面用具も小さいボトルに詰め替えた。

歩くことへの抵抗がなくなった。見島では1日に10キロ以上歩いたが、苦にならなかった。普段の通勤でも一駅分歩くようになり、体力がついた実感がある。

情報収集の方法も変わった。観光サイトだけでなく、自治体の公式ページや個人のブログも読むようになった。特に実際に行った人の体験談は参考になった。

予備プランの重要性も理解した。フェリーが欠航した場合の代替案を考えておくべきだったと、帰宅後に気づいた。今後の旅行では必ず予備日や代替ルートを検討するようにしている。

現地の人との会話も意識するようになった。民宿の女将さんや港で会った島民の方との短い会話から、島の実情を知ることができた。ガイドブックには載っていない情報が得られた。

写真の撮り方も変化した。観光名所だけでなく、集落の路地や港の風景、バスの車窓など、移動中の何気ない景色も記録するようになった。後から見返すと、そういう写真の方が記憶を呼び起こす。

時間に対する感覚も変わった。都市部では5分のバスの遅れでもイライラしていたが、1日1便のフェリーを待つ経験をしてから、時間の流れ方が場所によって違うことを実感した。急ぐ必要のない時間を過ごせるようになった。

旅行先の選び方も変わった。以前は有名な観光地ばかり選んでいたが、今はアクセスの難しい場所にも興味を持つようになった。行きにくい場所ほど、着いた時の達成感があることを知った。

まとめ

フェリーと路線バスで見島に行く旅は、想定以上に時間がかかったが、それ以上に得るものが多かった。東京から3泊4日かけて、約700人が暮らす島に辿り着く過程そのものが旅の価値だった。

アクセスの難しさは、事前準備の重要性を教えてくれた。食料、現金、時刻表の確認、服装の選択など、一つひとつの準備が現地での快適さに直結した。特に1日1便のフェリーというスケジュールは、余裕を持った計画の必要性を痛感させた。

見島での滞在時間は実質30時間程度だったが、島内を歩き、景色を見て、民宿で島の話を聞くことで、その土地の空気を感じられた。効率だけを求める旅とは違う充実感があった。

この経験後、他のアクセス困難な島にも興味を持つようになった。五島列島の小値賀島、隠岐諸島の知夫里島など、行ってみたい場所のリストができた。公共交通機関だけで行ける範囲が、思った以上に広いことも分かった。

費用面でも満足している。往復の交通費と宿泊費、食費を合わせて約3万5千円で済んだ。飛行機とレンタカーを使えば時間は短縮できただろうが、この旅のペースが自分には合っていた。

今後も年に1回は、こうした時間のかかる旅をしたいと考えている。次は東北の離島か、瀬戸内海の島を検討している。アクセスの難しさを楽しむ旅は、自分なりの旅のスタイルとして定着しつつある。

カテゴリー
タグ

青島ひとり旅|猫と海に助けられた日(瀬戸内)

少し、疲れていました。

理由ははっきりしないけれど、
人の多さや、情報の多さに。

青島に行こうと思ったのは、ただ何かから逃げたかったからだ。

理由なんて、なかったと思う。
そんなふうに書くと大げさだけれど、でも正直なところ、明確な目的があったわけじゃない。「猫の島」という響きに惹かれて、ただなんとなく検索して、新幹線のチケットを取って。気づいたら、リュックひとつで家を出ていた。

三月の終わり。春なのか冬なのか、どっちつかずの季節。

🔁 旅ちゃんねるの前回の癒し旅はこちら
👉 わたらせ渓谷鉄道|途中下車の癒し旅

青島ってどんな島?

青島は愛媛県の瀬戸内海に浮かぶ小さな島。
人口は十数人、猫はその数倍。

観光施設も商店もない、静かな時間が流れる場所だ。

そこで人間より存在感を放っているのが、猫たち。

海の匂いが、変わっていく

伊予西条駅で降り、ローカル線に乗り換えた。
窓の外の景色が、だんだんと海に近づいていく。

田んぼ、民家、小さな工場。
そしてふいに視界が開け、瀬戸内海が見えた。

潮の匂い、鉄の匂い。
都会の海とは違う、生の匂い。

船に乗るということ

小さな船「青島丸」。
乗り込むと、磯と少しのガソリンの匂い。

港が遠ざかり、陸が小さくなる。
なんだか泣きたくなった。理由はわからない。

海の上は、想像より静かだった。

猫が出迎える島

最初に出会ったのは三毛猫。
逃げない、驚かない、じっと見てくる。

その視線は
歓迎でも拒絶でもない、ただ「存在」しているだけ。

道を進むと、猫、猫、猫。
どの猫も人を恐れない。
それがこの島の日常なのだと、すぐにわかった。

島の人と猫

家の前で猫に餌をあげるおじいさん。
猫の名前を一匹ずつ教えてくれる。

「都会から来たんかね」
「東京からです」
「そうか。疲れとるんじゃないか」

その言葉に、胸がぎゅっとなった。
疲れていたことにすら、気づいていなかった。

ひとりと、海と

猫たちがいない岩場で、海を眺めた。
瀬戸内海は静かに、寄せては返す。

その繰り返しを見ているだけで、
さっきまでの悩みが少しずつ遠ざかっていく。

小さな事件

岩の隙間に挟まった一匹の子猫。
そっと手を伸ばし、抱き上げる。

震える小さな体。
助けたというより、
助けさせてもらったのだと思った。

胸の奥が、じんわりと温かくなる。

また会えるという安心

港に戻ると、さっきのおじいさん。
最後に三毛猫が足元に座る。

見送ってくれている気がした。

船が島を離れる。
海の向こうに青島がある。
もう見えないけれど、確かにある。

東京に戻ってわかったこと

都会の雑踏。忙しそうな人々。

でも今は、少し違う。
急がなくてもいい、と思える。

青島で
「忘れていたことを思い出した」
のかもしれない。

あなたに伝えたいこと

もし、何かに疲れているなら。
もし、何かを探しているなら。
もし、息苦しさを抱えているなら。

青島に行ってみてほしい
…とは言わない。

でも、
日常から少し離れるだけで
世界はやさしくなることがある。

旅は、答えを見つけるものじゃない。
問いを持ち帰るものだと思う。

青島への行き方

瀬戸内の小さな島・青島へは、鉄道と船を乗り継いで向かいます。

① JR予讃線「伊予長浜駅」へ

松山駅から約70分。
海沿いを走る列車の車窓も旅の楽しみ。

② 徒歩で長浜港へ

駅から港はすぐ。
港の小さな待合所で乗船手続きをします。

③ 船で青島へ(約15分)

便数は1日2~3便。
時間に余裕を持って行くのがおすすめです。

※商店・宿泊施設なし。
飲み物と軽食は事前に準備を。
猫への餌やりは、島の方にお任せしましょう。

旅は終わらない。
わたしの中で、青島はまだ続いている。

この旅で感じたこと

この旅を通して感じたのは、
「たくさん見たか」「どこまで行ったか」よりも、
その時間をどう受け取れたかで、旅の価値は大きく変わるということでした。

観光地を効率よく回る旅は、確かに達成感があります。
でも一方で、移動や予定に追われて、
気づけば「何を感じたか」より「何をこなしたか」だけが残ることもあります。

今回の旅では、そうした“評価されやすい旅の形”から、
少しだけ距離を置いてみました。
予定を詰め込まず、何もしない時間を受け入れてみる。
それだけで、景色の見え方や、時間の流れが驚くほど変わった気がします。

旅先で特別な出来事が起きたわけではありません。
でも、だからこそ、
「日常から離れていた」という実感が、静かに残りました。

もし最近、
・旅に出ても疲れが残る
・どこへ行っても似たような感覚になる
そんなふうに感じているなら、
こうした“余白のある旅”も、一つの選択肢になるかもしれません。

この旅は、
「どこへ行くか」よりも、
「どう過ごすか」を考えるきっかけを、確かに与えてくれました。

 

🔗 次の癒し旅はこちらもどうぞ👇

👉 フェリーと路線バスで行く“アクセス最難関の島”体験記

👉 男木島|猫と人とアートの島

 

カテゴリー
タグ

1両だけの列車で行く「わたらせ渓谷鉄道」途中下車の旅

 

都内に住んでいると、電車移動といえば常に混雑した車内で立ったまま移動するのが当たり前になっていた。週末も人混みを避けられる場所が少なく、気分転換したいと思っても結局は観光地の人波に疲れて帰ってくることが続いていた。

そんなとき、群馬と栃木にまたがるローカル線の存在をネットで知った。わたらせ渓谷鉄道という路線で、1両編成の列車が渓谷沿いをゆっくり走るという。調べてみると、途中駅で降りても次の列車まで1〜2時間待てば問題なく、のんびり過ごすには向いている環境だとわかった。

平日に1日休みが取れる日があったので、混雑を避けられるこのタイミングで実際に行ってみることにした。事前に時刻表をスマホで確認すると、列車の本数は1日10本程度と少なく、計画を立てないと駅で長時間待つことになりそうだった。そこで前日に簡単なスケジュールを組んでから出発することにした。

 

🔁 旅ちゃんねるの前回の癒し旅はこちら
青島ひとり旅|猫と海に助けられた日(瀬戸内)

 

🎥動画はこちら👇

実際にやってみた流れ

朝7時に自宅を出て、まず東武鉄道の浅草駅へ向かった。わたらせ渓谷鉄道の起点は桐生駅だが、そこまでのアクセスはいくつかルートがある。今回はJR両毛線を使う方法と東武鉄道を使う方法を比較し、東武線の特急りょうもう号で赤城駅まで行き、そこから各駅停車で相老駅経由で桐生駅に向かうルートを選んだ。

浅草駅8時10分発の特急に乗車した。指定席券は事前にスマホアプリで購入しておいた。券売機の操作に慣れていないと時間がかかると思ったからだ。特急は約1時間40分で赤城駅に到着し、そこから各駅停車に乗り換えた。相老駅で下車してわたらせ渓谷鉄道のホームへ移動する。

相老駅のわたらせ渓谷鉄道ホームは東武線のホームとは別になっていて、一度改札を出る必要はなく連絡通路で繋がっていた。ホームに着くと、すでに1両編成の列車が停車していた。車体は緑色で、側面に路線のロゴマークが描かれている。ドアは手動ボタン式で、自分で押して開ける仕組みだった。

車内に入ると、ロングシートではなくボックスシートが並んでいた。平日の午前中ということもあり、乗客は5〜6人程度。窓側の席に座り、事前に購入しておいた1日フリー乗車券を取り出した。この乗車券は大人2,100円で、桐生駅から終点の間藤駅まで何度でも乗り降りできる。駅の窓口でも買えるが、当日は時間短縮のため桐生駅で購入することにしていた。

相老駅から桐生駅までは1駅で約5分。桐生駅に到着後、いったん改札を出て駅の窓口で1日フリー乗車券を購入した。窓口の係員に「途中下車したい」と伝えると、おすすめの駅をいくつか教えてくれた。神戸駅、水沼駅、足尾駅あたりが見どころが多いとのことだった。

再び同じ列車に乗り込み、10時37分発の間藤行きに乗車した。桐生駅を出発すると、すぐに住宅地を抜けて山間部に入っていく。列車の速度はゆっくりで、時速40〜50キロ程度だと感じた。窓から見える景色は渓谷と川、そして森が続く。

最初の下車駅として選んだのは神戸駅だった。桐生駅から約30分、11時7分に到着した。神戸駅は無人駅で、ホームには古い木造の待合室があるだけだった。駅を出ると目の前に小さな商店と食堂が見えた。駅前には案内マップがあり、それを見ながら徒歩圏内の場所を確認した。

駅から徒歩5分ほどの場所にある「草木ダム」へ向かうことにした。案内板に従って車道沿いを歩くと、10分ほどで渡良瀬川にかかる赤い橋が見えてきた。橋を渡った先にダムの入口があり、ダムの上まで歩いて行けるようになっていた。ダムの上からは湖と周囲の山々が見渡せた。観光客は他に2組ほどしかおらず、静かに景色を眺められた。

ダムを20分ほど見て回り、再び神戸駅に戻った。次の列車は12時18分発だったので、駅前の食堂で昼食を取ることにした。食堂は地元の人が経営している小さな店で、メニューは定食が中心だった。日替わり定食を注文すると、ご飯、味噌汁、焼き魚、煮物、漬物が出てきた。価格は850円で、量も十分だった。

食事を終えて駅に戻ると、ちょうど列車が到着するタイミングだった。再び1両編成の列車に乗り込み、次の目的地である水沼駅を目指した。神戸駅から水沼駅までは約20分、12時38分に到着した。

水沼駅は駅舎内に温泉施設が併設されている珍しい駅だった。駅の改札を出るとすぐに「水沼駅温泉センター」の入口があった。入浴料は600円で、タオルは200円でレンタルできた。受付で料金を支払い、脱衣所に入った。

温泉は内湯と露天風呂があり、露天風呂からは山の景色が見えた。平日の昼間ということもあり、入浴客は自分を含めて3人だけだった。40分ほどゆっくり浸かり、休憩スペースで15分ほど体を休めた。

温泉から出て時刻表を確認すると、次の列車は14時18分発だった。まだ1時間ほど時間があったので、駅周辺を歩いてみることにした。駅から徒歩3分ほどの場所に小さな商店があり、そこで飲み物を買った。店の人に話を聞くと、この辺りは昔は銅山で栄えた地域だと教えてくれた。

14時18分の列車に乗り、次は足尾駅を目指した。水沼駅から足尾駅までは約30分で、14時48分に到着した。足尾駅は有人駅で、駅舎も比較的大きかった。駅を出ると、正面に「足尾銅山観光」という看板が見えた。

足尾銅山観光施設は駅から徒歩15分ほどの場所にあった。道中は緩やかな上り坂で、途中に古い建物や史跡の案内板があった。施設の入場料は820円で、受付で料金を支払うとヘルメットを渡された。

施設内では実際の坑道跡をトロッコに乗って見学できる。トロッコは約15分間隔で出発していて、待ち時間は5分程度だった。トロッコに乗り込むと、薄暗い坑道の中を進んでいく。内部には当時の作業風景を再現した人形が展示されていて、音声ガイドで説明が流れた。坑道見学は約30分で終了した。

施設を出て再び足尾駅に戻ると、16時15分だった。次の列車は16時42分発だったので、駅の待合室で休憩した。待合室には足尾銅山の歴史や公害問題についての展示パネルがあり、それを読みながら時間を過ごした。

16時42分発の列車に乗り、終点の間藤駅まで行ってみることにした。足尾駅から間藤駅までは約10分、16時52分に到着した。間藤駅は路線の終点で、ホームの先には線路が途切れている様子が見えた。駅舎は小さく、無人駅だった。

駅周辺には特に観光施設はなく、住宅が数軒あるだけだった。ホームから見える山々の景色を10分ほど眺め、折り返しの17時9分発の列車に乗った。

帰りは桐生駅まで直通で戻ることにした。途中の景色を眺めながら、約1時間10分で桐生駅に到着した。時刻は18時19分だった。桐生駅からは東武鉄道で帰路についた。

途中でつまずいた点

最初につまずいたのは列車の本数の少なさだった。時刻表を事前に確認していたものの、実際に駅で待つと1時間以上の待ち時間が発生することがあった。特に神戸駅では次の列車まで70分あり、食事をしても時間が余った。当初は3〜4駅で途中下車する計画だったが、時間の都合で結果的に4駅に絞ることになった。

次につまずいたのは駅周辺の情報不足だった。神戸駅で降りたときも、駅前の案内マップだけでは周辺施設の営業時間や距離感が正確に掴めなかった。スマホの地図アプリで検索したが、電波が弱い場所もあり、読み込みに時間がかかった。

足尾銅山観光施設へ向かう際も、駅からの道順が少しわかりにくかった。案内看板はあったが、途中で分岐する道があり、どちらに進めばいいか迷った。結局、地元の人に道を尋ねて正しいルートを教えてもらった。

また、水沼駅の温泉ではタオルを持参していなかったため、レンタル料金が追加でかかった。事前に調べていれば持参できたので、この点は準備不足だった。

食事についても、駅周辺に食堂があるかどうかは駅によって差があった。神戸駅では駅前に食堂があったが、他の駅では近くに飲食店が見当たらない場所もあった。水沼駅や足尾駅でも食事できる場所を探したが、選択肢は限られていた。

自分なりに工夫した部分

列車の本数が少ないことへの対策として、待ち時間を有効活用する方法を考えた。まず、駅に到着したらすぐに次の列車の時刻を確認し、その時間から逆算して行動計画を立てた。例えば神戸駅では、ダムまでの往復時間を30分、食事時間を30分と見積もり、余裕を持って行動できるようにした。

スマホの電波が弱い場所があることを想定し、事前に主要な観光スポットの位置をスクリーンショットで保存しておいた。これにより、電波がなくても地図を確認できた。また、駅の案内マップもスマホで撮影しておき、後から見返せるようにした。

水沼駅の温泉では、タオルをレンタルすることになったが、次回のために小さめのタオルを持ち歩くことにした。また、温泉施設の営業時間や料金は事前に公式サイトで確認しておくと、現地での判断がスムーズになると気づいた。

食事については、神戸駅で昼食を取れたことが結果的に良かった。他の駅では飲食店が少ないため、事前にコンビニや駅の売店でパンや飲み物を買っておくことも選択肢として考えた。実際、桐生駅の売店で飲み物とお菓子を買い、移動中の車内で食べることもあった。

列車の待ち時間については、駅の待合室や周辺をゆっくり散策することで、観光とは違った地域の雰囲気を感じられた。足尾駅では駅の展示パネルを読むことで、歴史的な背景を学ぶ時間になった。

カメラの充電にも注意を払った。スマホで写真を撮り続けると電池の消耗が早いため、モバイルバッテリーを持参した。これにより、帰路でも安心して写真を撮れた。

実感した変化

この旅を通して、時間の使い方に対する考え方が変わった。都内での生活では、常に効率を優先して移動していたが、わたらせ渓谷鉄道では列車を待つ時間が自然に組み込まれている。最初は待ち時間を無駄だと感じていたが、次第にその時間を楽しむようになった。

駅周辺を歩いているときも、急いで観光スポットを巡るのではなく、景色を眺めたり地元の人と話したりする余裕ができた。神戸駅の食堂で店の人と話したことや、足尾駅で道を尋ねた際の会話が、旅の印象に残っている。

スマホの使用頻度も減った。移動中はSNSを見る時間が減り、窓の外を眺める時間が増えた。1両編成の小さな車内では、他の乗客との距離も近く、静かな雰囲気の中で過ごせた。

水沼駅の温泉では、旅の途中で体を休めることができた。都内の日帰り温泉とは違い、混雑していないため、本当にリラックスできた。温泉から出た後の爽快感は、次の目的地への移動を楽しみにさせてくれた。

足尾銅山観光では、歴史を学ぶことで地域への理解が深まった。単なる観光地巡りではなく、その土地の背景や人々の暮らしを知ることができた。これは事前の計画では想定していなかった収穫だった。

帰宅後も、旅の記憶が鮮明に残った。写真を見返すと、駅のホームで列車を待っていた時間や、ダムの上から眺めた景色が思い出される。都内での日常とは異なるペースで過ごした1日が、気持ちのリフレッシュに繋がった。

翌週からの仕事でも、焦りが減り、目の前のことに集中できるようになった。わたらせ渓谷鉄道での経験が、日常生活の時間感覚に影響を与えたと感じている。

まとめ

わたらせ渓谷鉄道の途中下車の旅は、事前の計画と現地での柔軟な対応が必要だった。列車の本数が少ないため、時刻表の確認は必須で、待ち時間を有効に使う工夫が求められた。一方で、その待ち時間があるからこそ、急がずにゆっくり過ごせる環境が整っていた。

駅周辺の情報は事前に調べておくと安心だが、現地で人に尋ねることも旅の一部として楽しめた。スマホの地図だけに頼らず、案内マップや地元の人の話を参考にすることで、より深い体験ができた。

温泉や食事、観光施設など、それぞれの駅に特徴があり、自分の興味に合わせて途中下車する駅を選べる。今回は4駅で途中下車したが、次回は別の駅を選んでみたいと思っている。

1両編成の小さな列車での移動は、都内の通勤電車とは全く異なる体験だった。混雑とは無縁の車内で、渓谷沿いの景色を眺めながら過ごす時間は、日常から離れる良い機会になった。平日に休みが取れる人には特におすすめできる旅だと感じた。

 

🔗 次の癒し旅はこちらもどうぞ👇

👉 男木島|猫と人とアートの島

 

カテゴリー
タグ