都内に住んでいると、電車移動といえば常に混雑した車内で立ったまま移動するのが当たり前になっていた。週末も人混みを避けられる場所が少なく、気分転換したいと思っても結局は観光地の人波に疲れて帰ってくることが続いていた。
そんなとき、群馬と栃木にまたがるローカル線の存在をネットで知った。わたらせ渓谷鉄道という路線で、1両編成の列車が渓谷沿いをゆっくり走るという。調べてみると、途中駅で降りても次の列車まで1〜2時間待てば問題なく、のんびり過ごすには向いている環境だとわかった。
平日に1日休みが取れる日があったので、混雑を避けられるこのタイミングで実際に行ってみることにした。事前に時刻表をスマホで確認すると、列車の本数は1日10本程度と少なく、計画を立てないと駅で長時間待つことになりそうだった。そこで前日に簡単なスケジュールを組んでから出発することにした。
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実際にやってみた流れ
朝7時に自宅を出て、まず東武鉄道の浅草駅へ向かった。わたらせ渓谷鉄道の起点は桐生駅だが、そこまでのアクセスはいくつかルートがある。今回はJR両毛線を使う方法と東武鉄道を使う方法を比較し、東武線の特急りょうもう号で赤城駅まで行き、そこから各駅停車で相老駅経由で桐生駅に向かうルートを選んだ。
浅草駅8時10分発の特急に乗車した。指定席券は事前にスマホアプリで購入しておいた。券売機の操作に慣れていないと時間がかかると思ったからだ。特急は約1時間40分で赤城駅に到着し、そこから各駅停車に乗り換えた。相老駅で下車してわたらせ渓谷鉄道のホームへ移動する。
相老駅のわたらせ渓谷鉄道ホームは東武線のホームとは別になっていて、一度改札を出る必要はなく連絡通路で繋がっていた。ホームに着くと、すでに1両編成の列車が停車していた。車体は緑色で、側面に路線のロゴマークが描かれている。ドアは手動ボタン式で、自分で押して開ける仕組みだった。
車内に入ると、ロングシートではなくボックスシートが並んでいた。平日の午前中ということもあり、乗客は5〜6人程度。窓側の席に座り、事前に購入しておいた1日フリー乗車券を取り出した。この乗車券は大人2,100円で、桐生駅から終点の間藤駅まで何度でも乗り降りできる。駅の窓口でも買えるが、当日は時間短縮のため桐生駅で購入することにしていた。
相老駅から桐生駅までは1駅で約5分。桐生駅に到着後、いったん改札を出て駅の窓口で1日フリー乗車券を購入した。窓口の係員に「途中下車したい」と伝えると、おすすめの駅をいくつか教えてくれた。神戸駅、水沼駅、足尾駅あたりが見どころが多いとのことだった。
再び同じ列車に乗り込み、10時37分発の間藤行きに乗車した。桐生駅を出発すると、すぐに住宅地を抜けて山間部に入っていく。列車の速度はゆっくりで、時速40〜50キロ程度だと感じた。窓から見える景色は渓谷と川、そして森が続く。
最初の下車駅として選んだのは神戸駅だった。桐生駅から約30分、11時7分に到着した。神戸駅は無人駅で、ホームには古い木造の待合室があるだけだった。駅を出ると目の前に小さな商店と食堂が見えた。駅前には案内マップがあり、それを見ながら徒歩圏内の場所を確認した。
駅から徒歩5分ほどの場所にある「草木ダム」へ向かうことにした。案内板に従って車道沿いを歩くと、10分ほどで渡良瀬川にかかる赤い橋が見えてきた。橋を渡った先にダムの入口があり、ダムの上まで歩いて行けるようになっていた。ダムの上からは湖と周囲の山々が見渡せた。観光客は他に2組ほどしかおらず、静かに景色を眺められた。
ダムを20分ほど見て回り、再び神戸駅に戻った。次の列車は12時18分発だったので、駅前の食堂で昼食を取ることにした。食堂は地元の人が経営している小さな店で、メニューは定食が中心だった。日替わり定食を注文すると、ご飯、味噌汁、焼き魚、煮物、漬物が出てきた。価格は850円で、量も十分だった。
食事を終えて駅に戻ると、ちょうど列車が到着するタイミングだった。再び1両編成の列車に乗り込み、次の目的地である水沼駅を目指した。神戸駅から水沼駅までは約20分、12時38分に到着した。
水沼駅は駅舎内に温泉施設が併設されている珍しい駅だった。駅の改札を出るとすぐに「水沼駅温泉センター」の入口があった。入浴料は600円で、タオルは200円でレンタルできた。受付で料金を支払い、脱衣所に入った。
温泉は内湯と露天風呂があり、露天風呂からは山の景色が見えた。平日の昼間ということもあり、入浴客は自分を含めて3人だけだった。40分ほどゆっくり浸かり、休憩スペースで15分ほど体を休めた。
温泉から出て時刻表を確認すると、次の列車は14時18分発だった。まだ1時間ほど時間があったので、駅周辺を歩いてみることにした。駅から徒歩3分ほどの場所に小さな商店があり、そこで飲み物を買った。店の人に話を聞くと、この辺りは昔は銅山で栄えた地域だと教えてくれた。
14時18分の列車に乗り、次は足尾駅を目指した。水沼駅から足尾駅までは約30分で、14時48分に到着した。足尾駅は有人駅で、駅舎も比較的大きかった。駅を出ると、正面に「足尾銅山観光」という看板が見えた。
足尾銅山観光施設は駅から徒歩15分ほどの場所にあった。道中は緩やかな上り坂で、途中に古い建物や史跡の案内板があった。施設の入場料は820円で、受付で料金を支払うとヘルメットを渡された。
施設内では実際の坑道跡をトロッコに乗って見学できる。トロッコは約15分間隔で出発していて、待ち時間は5分程度だった。トロッコに乗り込むと、薄暗い坑道の中を進んでいく。内部には当時の作業風景を再現した人形が展示されていて、音声ガイドで説明が流れた。坑道見学は約30分で終了した。
施設を出て再び足尾駅に戻ると、16時15分だった。次の列車は16時42分発だったので、駅の待合室で休憩した。待合室には足尾銅山の歴史や公害問題についての展示パネルがあり、それを読みながら時間を過ごした。
16時42分発の列車に乗り、終点の間藤駅まで行ってみることにした。足尾駅から間藤駅までは約10分、16時52分に到着した。間藤駅は路線の終点で、ホームの先には線路が途切れている様子が見えた。駅舎は小さく、無人駅だった。
駅周辺には特に観光施設はなく、住宅が数軒あるだけだった。ホームから見える山々の景色を10分ほど眺め、折り返しの17時9分発の列車に乗った。
帰りは桐生駅まで直通で戻ることにした。途中の景色を眺めながら、約1時間10分で桐生駅に到着した。時刻は18時19分だった。桐生駅からは東武鉄道で帰路についた。
途中でつまずいた点
最初につまずいたのは列車の本数の少なさだった。時刻表を事前に確認していたものの、実際に駅で待つと1時間以上の待ち時間が発生することがあった。特に神戸駅では次の列車まで70分あり、食事をしても時間が余った。当初は3〜4駅で途中下車する計画だったが、時間の都合で結果的に4駅に絞ることになった。
次につまずいたのは駅周辺の情報不足だった。神戸駅で降りたときも、駅前の案内マップだけでは周辺施設の営業時間や距離感が正確に掴めなかった。スマホの地図アプリで検索したが、電波が弱い場所もあり、読み込みに時間がかかった。
足尾銅山観光施設へ向かう際も、駅からの道順が少しわかりにくかった。案内看板はあったが、途中で分岐する道があり、どちらに進めばいいか迷った。結局、地元の人に道を尋ねて正しいルートを教えてもらった。
また、水沼駅の温泉ではタオルを持参していなかったため、レンタル料金が追加でかかった。事前に調べていれば持参できたので、この点は準備不足だった。
食事についても、駅周辺に食堂があるかどうかは駅によって差があった。神戸駅では駅前に食堂があったが、他の駅では近くに飲食店が見当たらない場所もあった。水沼駅や足尾駅でも食事できる場所を探したが、選択肢は限られていた。
自分なりに工夫した部分
列車の本数が少ないことへの対策として、待ち時間を有効活用する方法を考えた。まず、駅に到着したらすぐに次の列車の時刻を確認し、その時間から逆算して行動計画を立てた。例えば神戸駅では、ダムまでの往復時間を30分、食事時間を30分と見積もり、余裕を持って行動できるようにした。
スマホの電波が弱い場所があることを想定し、事前に主要な観光スポットの位置をスクリーンショットで保存しておいた。これにより、電波がなくても地図を確認できた。また、駅の案内マップもスマホで撮影しておき、後から見返せるようにした。
水沼駅の温泉では、タオルをレンタルすることになったが、次回のために小さめのタオルを持ち歩くことにした。また、温泉施設の営業時間や料金は事前に公式サイトで確認しておくと、現地での判断がスムーズになると気づいた。
食事については、神戸駅で昼食を取れたことが結果的に良かった。他の駅では飲食店が少ないため、事前にコンビニや駅の売店でパンや飲み物を買っておくことも選択肢として考えた。実際、桐生駅の売店で飲み物とお菓子を買い、移動中の車内で食べることもあった。
列車の待ち時間については、駅の待合室や周辺をゆっくり散策することで、観光とは違った地域の雰囲気を感じられた。足尾駅では駅の展示パネルを読むことで、歴史的な背景を学ぶ時間になった。
カメラの充電にも注意を払った。スマホで写真を撮り続けると電池の消耗が早いため、モバイルバッテリーを持参した。これにより、帰路でも安心して写真を撮れた。
実感した変化
この旅を通して、時間の使い方に対する考え方が変わった。都内での生活では、常に効率を優先して移動していたが、わたらせ渓谷鉄道では列車を待つ時間が自然に組み込まれている。最初は待ち時間を無駄だと感じていたが、次第にその時間を楽しむようになった。
駅周辺を歩いているときも、急いで観光スポットを巡るのではなく、景色を眺めたり地元の人と話したりする余裕ができた。神戸駅の食堂で店の人と話したことや、足尾駅で道を尋ねた際の会話が、旅の印象に残っている。
スマホの使用頻度も減った。移動中はSNSを見る時間が減り、窓の外を眺める時間が増えた。1両編成の小さな車内では、他の乗客との距離も近く、静かな雰囲気の中で過ごせた。
水沼駅の温泉では、旅の途中で体を休めることができた。都内の日帰り温泉とは違い、混雑していないため、本当にリラックスできた。温泉から出た後の爽快感は、次の目的地への移動を楽しみにさせてくれた。
足尾銅山観光では、歴史を学ぶことで地域への理解が深まった。単なる観光地巡りではなく、その土地の背景や人々の暮らしを知ることができた。これは事前の計画では想定していなかった収穫だった。
帰宅後も、旅の記憶が鮮明に残った。写真を見返すと、駅のホームで列車を待っていた時間や、ダムの上から眺めた景色が思い出される。都内での日常とは異なるペースで過ごした1日が、気持ちのリフレッシュに繋がった。
翌週からの仕事でも、焦りが減り、目の前のことに集中できるようになった。わたらせ渓谷鉄道での経験が、日常生活の時間感覚に影響を与えたと感じている。
まとめ
わたらせ渓谷鉄道の途中下車の旅は、事前の計画と現地での柔軟な対応が必要だった。列車の本数が少ないため、時刻表の確認は必須で、待ち時間を有効に使う工夫が求められた。一方で、その待ち時間があるからこそ、急がずにゆっくり過ごせる環境が整っていた。
駅周辺の情報は事前に調べておくと安心だが、現地で人に尋ねることも旅の一部として楽しめた。スマホの地図だけに頼らず、案内マップや地元の人の話を参考にすることで、より深い体験ができた。
温泉や食事、観光施設など、それぞれの駅に特徴があり、自分の興味に合わせて途中下車する駅を選べる。今回は4駅で途中下車したが、次回は別の駅を選んでみたいと思っている。
1両編成の小さな列車での移動は、都内の通勤電車とは全く異なる体験だった。混雑とは無縁の車内で、渓谷沿いの景色を眺めながら過ごす時間は、日常から離れる良い機会になった。平日に休みが取れる人には特におすすめできる旅だと感じた。
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